identity 夜明けのティティ

「遠い空の向こうより近くに」から早6年。ついに再始動か!?

あの日(2007年1月「遠い空の向こうより近くに」を上映)の高揚感は忘れていない。すぐにでも次作に取りかかるつもりだったし、タイトルも決まっていて絵物語もできていた。参加したいと興味を持ってくれた方もいたし、次回作を楽しみしてくれる声も聞けて、当時は何が制作の足かせになっているのか分からぬまま、クランクインすることはなかった。時は無情に過ぎ、気がつけば不甲斐ないまでに社会に飲まれていた。
今となって振り返れば分かる。
「覚悟」が足りなかったのだ。そして今も「覚悟」があるとは言えないが、少なくともコンクリートで固めた感情にヒビが入ったのは確かだ。

いつか、いつかと思いながら年を重ねるのを止めるべく、何とか今年(2013年)は割と活動的な気ではいる。まずは一人でできるクリエイティブなことからと、コラージュをテーマにしてみた。最近また顔を出すようになったカフェのマスターが得意としている絵画の手法で「コラージュ」と言葉にするのはなんか見透かされそうで気がひけないわけではないが、絵画の枠を超えてコラージュを捉えてみた。本作品でもちょっぴりそんなエッセンスを盛り込もうと思った。

ここに5分間のショートショートフィルム「identity - 夜明けのティティ - 」完成!

10年前の自分がそうであったように、そしてまた今の自分にもまだ重なるように、熱く語る一人の青年の話しが気になった。気がつくとカメラを向けていた。そしてぼんやり自分が描いていた欠片とシンクロしたとき、本作のカタチは見えた。

アイデンティティ。

そう。これを封じたのだ。もともとアイデンティティが強すぎたのは、音楽活動や写真を撮ったりモノつくりが好きだったことからも自覚していた。社会になじむためにはこれは邪魔だった。だから封じる必要があったのだ。30歳を境にアイデンティティの角を削り、安定した生活を手に入れた。「普通」の暮らしができるようになった。アートさえ娯楽に置き換えてしまっていた。

答えはない。二兎は追えない。

*アイデンティティ:三省堂によれば「自分は自分であって,他人とは違うこと.自己同一性」とのこと。GOO辞書によれば「1. 自己が環境や時間の変化にかかわらず、連続する同一のものであること。主体性。自己同一性。 2. 本人にまちがいないこと。また、身分証明。」とのこと。

第1回世田谷短編映画祭上映

2013年11月に開催された第1回世田谷短編映画祭にて上映。実際はプロジェクターから上映するには、接続ケーブルがうまいこといかず断念するしかなかったが、ノートパソコンを囲んで上映することができた。

制作ダイアリー

画像:カメラ 動画を撮るきっかけがやってきた。最近恒例になっている高尾山ビアガーデン。ここしかないと、動画カメラの購入を決意。ビデオカメラを買おうか動画機能付きの一眼カメラを買うか迷う。結果、すでに一眼カメラのレンズをいろいろ持っていたので、動画機能が搭載された一眼カメラを購入した。SONY α57。ちょうどα77が発売されたタイミングだったので、世代前ということで格安でゲット(大満足)!

画像:高尾山ビアガーデン 初一眼ムービー。とりあえず使い方分からん。というわけでオート機能で。本作とは関係ありませんが、ホームページを制作する際のGoogleの著作情報対応のために自画像も撮っておく。恥ずい。

画像:ファッションショー ふらり新宿を散策していると新宿通りがすごいことになっていた。ただの歩行者天国ではなく、路上パフォーマンスが新宿通り上であちこち開催されていた。圧巻だったのはファッションショー。本ステージはカメラNGだったので、裏側を撮影した。

画像:東京タワー 仕事帰りに絶対撮影しよう、と決め、気合いを入れてスタンドとカメラを持って出社。仕事帰り、ノープランにもほどがあった。唯一のイメージは車の流れを歩道橋の上から撮影して、早回しすれば面白いんじゃないかということ(結局、これは撮影はしたが編集方法がうまくいかず失敗に終わる・・・)。テールライトがうまいことつながる緩やかな坂とカーブのある歩道橋を意識しながら歩く。そして歩く先に見えた東京タワー。プラン変更(もともとなかったが)。東京タワーを目指す。

ここまででなんとか作品ができそうな気がしたので、次の日の映画祭に上映してもらえないか確認してみるため、マスターのもとへ行く。そこで更なる「絵」が見つかった。常連客の会話に「絵」が見えたのだ。カメラを回す。偶然で終わらせるにはもったいない。よりいいもんができそうだとテンションあがる。ただ時間がない。ここで本作のテーマは決まった。

画像:脚本
起床。上映までの6時間でできることを頭に描く。必要なものを買いに行くのといったん頭にあるフレーズを整理するためにバスに揺られる。よし、脚本できた。脚本というほどではないけど、構成とかもイメージする。うーん、どうしても絵が必要だ。禁断の自主出演を敢行。素材揃った。iMovieで編集しようと思ったけど、ちょっと使い方調べてる間に夜になってしまいそうだったので、6年振りにFinal Cutを立ち上げる、のはずがこの6年の間にマシーン本体を買い替えており、ソフトがない。迷う時間はない。ぽちっとな。Final Cut Pro をネットショッピングで手に入れた。本当は音とナレーションをPro Toolsで撮りたかったが、なんせ時間がない。今できる最善速は一眼カメラで音を撮ってしまうこと。完成図は見えている。あとは優先度つけてこなすだけ。


映画際、はじまったころかな、と思いつつ、なんとか人に見せれる最低レベルまで出来上がった!急いで会場へ。なんとか第1回世田谷短編映画祭にて上映。明くる日、タイトル決めてロゴ作成して、エンドクレジットとサウンドつけて、長さを若干カットして5分に収め、無事完成となった。

監督・撮影・脚本 たけたけ(川上武範)

2013.11公開 / 高尾山、東京タワー、新宿、ギャラリーカフェPIGA / 0:04:38

本作品をYouTubeにて公開中!

YouTubeにて公開しました。5分間のショートショートフィルム、どうぞごゆるりとご鑑賞くださいませ。